〜社員の“モヤモヤ”を放置していたら、10億円の壁は越えられなかった〜
あるクライアント企業様のお話です。
創業以来、順調に事業を伸ばし、年商10億円突破を目指していました。
ところが、コロナ禍の影響もあり、売上はある一定のところで頭打ち。いくら施策を打っても社員の熱量がついてこない。幹部は疲弊し、現場にはどこか重たい空気が漂っていました。
そんなとき、ある幹部社員がつぶやきました。
「社長って、なんでこんなに車ばっかり買ってるんですかね…」
「そもそも、なんで別法人なんか作ったんでしょう?」
「あの新規事業、正直なところよくわからないです」
それは、単なる愚痴や批判ではありませんでした。
社内に“説明されていないこと”があまりに多く、社員たちは次第に自分たちの会社の方向性に確信を持てなくなっていたのです。
笛吹けど踊らず。
社長がいくら「売上10億円を目指そう!」と叫んでも、社員たちは心が動かない。
幹部も説明しきれない。
これは、明らかなコミュニケーションの欠如でした。
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車座での対話
社長はある日、思い切って全社員を集め、オフィスのフリースペースに“車座”で座りました。
テーブルも演台もなし。ただ、目線を合わせて話す。それだけです。
「なぜ、別法人を作ったのか?」
「なぜ、新規事業を始めたのか?」
「なぜ、社用車を何台も購入したのか?」
一つ一つの質問に対し、社長は丁寧に、噛み砕いて説明しました。
そして何より、「社員目線で」話すことを心がけました。
たとえば、車の件。
「正直、社長の趣味だと思ってました…」という声もありましたが、実はまったく違いました。
社長はこう語りました。
「車は“経費”じゃなくて“資産”なんだ。会社として所有することで資産になり、節税にもつながる。そして何より大事なのは、いざという時に現金に換えられるってこと。万が一、資金繰りが厳しくなっても、この車を売れば、社員のみんなの給与だって払える。実際、リスクを見越して備えておくのが経営なんだ」
この言葉に、社員たちはハッとさせられました。
「自分たちを守るための車だったんだ」と。
目に見えるものの奥にある、経営の意図や責任。その一端に触れた瞬間でした。
別法人の件も、「グループ全体での信用力強化」「採用戦略上の分社化」など、説明を受けて初めて納得する社員が多くいました。
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不思議な変化
その対話の場から数週間後、社内の空気はガラリと変わりました。
社員たちの雑談の中に、少しずつ未来への言葉が増えてきました。
「新規事業、ちょっと面白くなってきたね」
「もっともっとグループ会社として協力できることがありそうだね」
「そういえば、あの話、社長が言ってた通りになってるかも」
社員の納得感が行動につながり、行動が成果につながりはじめたのです。
そして、今期は目標としていた「年商10億円」は遂に突破されました。
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経営とは、誤解を解く旅である。
この事例が教えてくれるのは、経営者の「ビジョン」や「戦略」自体の良し悪しではなく、“伝え方”の重要性です。
どれほど素晴らしい戦略であっても、社員が「なぜやるのか?」を理解していなければ、力は出ません。
逆に、理解さえすれば、社員は想像以上の力を発揮してくれる。
経営者は、日々の数字や戦略を追うことに忙殺されがちですが、
時には足を止めて「伝える」「聴く」ことに時間を使ってみてください。
売上の停滞の裏には、社員の“?”が隠れています。
その“?”に、どれだけ真摯に向き合えるか。
その積み重ねが、売上の壁を越えるカギになるのです。
プロパト・代表の飯田でした。
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