今、日本はいちいち承認されたい人といちいち評価したい人で溢れている。
「バズってるね!」「いいね1万超えてる!」
そんな言葉が、今や一種の“価値の証明”になっている。
SNSという鏡の前で、私たちは今日も「誰かに認められたい」という気持ちを必死に呟いている。
本来、自分の行動や発信は「自分自身のため」あるいは「誰かの役に立つため」にあるはずなのに、いつしか「他人の反応ありき」でなければ落ち着かないような社会になってしまった。
同じようなことが組織の中でも起きている。
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■ 承認されたい人が溢れている社会
たとえば、SNSで「会社を辞めました」「新しい挑戦します」といった投稿がバズることがある。
そこに寄せられるのは、「すごいですね!」「応援してます!」という承認のシャワー。
もちろん、こうしたエールは悪いことではない。でも、それを“もらわないと不安になる”状態は、ちょっと危うい。
会社組織でも同じようなことが起きている。
「もっと褒めてほしい」「努力を見ていてほしい」という声が聞こえてくる。
人は誰しも認められたい。けれど、それが過剰になると…評価されない=自分には価値がない
とさえ思い込んでしまうのだ。
「承認欲求」は、持っていて当たり前。でも、依存してしまうと、いつしか“自分が本当にやりたいこと”が、他人の目に左右されるようになる。
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■ いちいち評価したがる人もまた問題
一方で、逆のベクトルにいるのが「いちいち評価したがる人」たちだ。
「あいつは最近頑張ってないな」「あの人の発言、ちょっとズレてる」と、つい他人に点数をつけたくなる。
これはSNSでもよく見る光景だ。
ある人の投稿に対して、「これは常識がない」「意識高い系すぎる」といったコメントが並ぶ。
こうした“即評価・即断罪”の文化の裏には、
「自分が他人よりも上にいることを感じたい」
という心理(自己顕示欲)が隠れていることも少なくない。
評価することで自分の立場を確かめる。それが癖になってしまうと、組織はすぐに「監視とジャッジの場」になってしまう。
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■ 組織における弊害
「承認されたい人」と「評価したい人」がぶつかると、組織はぎくしゃくする。
上司の顔色ばかり伺って、本音を言えない部下。後輩の発言にすぐダメ出しする先輩がいることで、新しいアイデアが萎縮してしまう。
“承認”と“評価”は、本来組織にとって重要な機能だ。でも、必要以上にそれに依存しはじめたとき、組織は「挑戦しない文化」に変わってしまう。
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■ 組織づくりコンサルとしての提言
僕は、組織づくりのコンサルタントとして、
こうした「承認と評価の偏り」が、現場の行動を大きく縛っている現実を何度も見てきた。
じゃあ、どうすればいいのか?
まずは、組織が「承認されることが目的」になっていないかを問い直す必要がある。
本当にやるべきなのは、“貢献の実感”が得られる機会をつくること。
たとえば、成果だけでなく「行動」や「変化」をフィードバックする文化。上司は「良し悪しをジャッジする人」ではなく、「挑戦の舞台を用意し、感謝する人」となる。
また、特にSNSに慣れている若手には、「誰かに承認されなくても価値がある経験」をあえて与えていくことも重要だ。
誰にも見られていなくても、意味がある。その実感こそが、自走する組織人を育てる鍵になる。
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■ おわりに
「いちいち承認されたい人」と「いちいち評価したい人」が溢れる社会や組織には、残念ながら未来がない。
誰かの目にどう映るかよりも、自分が何に価値を見出すか。
組織づくりも、人生も“見られる”ことに意味を求めるのではなく、“意味をつくる”ことに向かっていけたらと思う。
プロパト・代表の飯田でした。
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